「助産師1年目、つらいな」
そう思いながら働いている人は、きっと少なくないと思います。
助産学生の頃は、助産師として働くことを楽しみにしていたはずなのに、いざ現場に出てみると、覚えることは多いし、毎日緊張する。先輩との関わりにも気を遣う。帰宅したら何もする気になれず、休日も寝て終わってしまう。
「こんなにできないのは、自分に助産師が向いていないからなのかな」
「2年目になったら、少しは楽になるのかな」
去年の私は、そんなことを考えていました。
そして今、私は助産師2年目になりました。
もちろん、2年目になったからといって、すべてができるようになったわけではありません。今でも分からないことはありますし、判断に迷うこともあります。失敗することもあります。
それでも、1年目の頃とは明らかに変わったことがあります。
今回は、私自身が感じた「助産師2年目の変化」について書いてみます。
今まさに1年目で苦しんでいる人や、これから助産師として働く人にとって、「2年目ってこんな感じなのか」と少し先を想像する材料になれば嬉しいです。
① 基本的な業務は自律して行なえるようになった

一番分かりやすい変化は、基本的な業務を自分で進められるようになったこと。
1年目の頃は、病棟の流れを覚えることだけで精一杯でした。
何を、いつまでに、どこまでやればいいのか。
一つひとつ確認しながら動いていたし、目の前のことをこなすだけで一日が終わっていました。
正常経過の妊婦さんや褥婦さんを受け持っても、「必要なケアを抜けなく行う」ことで精一杯。
マニュアルを確認して、決められたことを行って、記録して、また次の業務へ。
まずは安全に、基本的なことを一つずつ身につける。
1年目の私には、それだけで精一杯でした。
また、全ての手技、ケアを先輩とセットで監視下で行わなければならないことも安心な反面、大きなストレスになっていました。
2年目になった今は、正常経過の妊婦さん・褥婦さんであれば、基本的なケアを自分で考えながら進められるようになりました。
ハイリスクの方を受け持つ機会も増え、幅広い症例を見ることができるように。
そして、少しずつ変わってきたのが、「何をするか」だけではなく、「この方には何が必要なんだろう」と考えられるようになったことです。
1年目は、身体的なケアを安全に行うことに必死でした。
今はそこに少しずつ、
「この人は今、何を不安に思っているんだろう」
「退院後の生活で困りそうなことはないかな」
「この人が大切にしたいことは何だろう」
という視点を持てるようになってきました。
まだまだ十分とは言えません。
それでも、「決められたケアをする」から「その人を見て考える」へ。
タスクをこなすようになってしまっていたところから、相手のニーズを汲み取り、必要なケアを共に考える時間を楽しめるようになってきたのが昨年からの大きな成長のように感じます。
② 優先順位をつけて動けるようになった

新生児室の業務も、大きく変わったことの一つです。
1年目の頃は、複数人の赤ちゃんが一斉に泣くと、それだけで頭がいっぱいになっていました。
「みんな泣いている。どうしよう」
泣き声に追い立てられるような感覚になって、優先順位をつける余裕なんてありませんでした。
今思えば、赤ちゃんが泣いていること自体が問題なのではなく、泣き声を聞いたときに、自分の中で「何を優先したらいいのか」を整理できなかったことが苦しかったのだと思います。
2年目になって、少しずつ経験が積み重なりました。
「まずこの子を見よう」
「この子は少し待っても大丈夫」
「これはすぐに対応したほうがいい」
と、状況を見ながら優先順位をつけられるようになってきました。
もちろん、今でも忙しいと焦ることはあります。
それでも、以前のように「全部やらなきゃ」と頭が真っ白になることは減りました。
経験が増えるということは、単純に知識や技術が増えるだけではない。
「今、何をするべきか」を考えられるようになることでもあるのだと思います。
③ 職場の環境や、人との関わり方に慣れてきた
仕事そのものだけではなく、職場という環境に慣れたことも大きな変化です。
1年目は、先輩がどんな人なのかも分かりません。
どんなことを大切にしている人なのか。
どのタイミングで相談したらいいのか。
どんな伝え方をすればいいのか。
何も分からないから、とにかく緊張していました。
2年目になると、少しずつ相手のことが分かってきます。
「この先輩は、こういうときにこういうことを大切にする」
「これは早めに相談したほうがいい」
「このことは自分で考えてから相談したほうがいい」
そんなふうに、職場の中での動き方が少しずつ分かってきました。
人間関係そのものが劇的に変わったわけではありません。
でも、「分からないことだらけの場所」ではなくなった。
それだけでも、仕事中の緊張感はかなり違います。
そして2年目になって、後輩が入ってきました。
今までずっと「教えてもらう側」だったのが、少しずつ「教える側」にもなった。
後輩に説明するために、自分が曖昧に覚えていたことを調べ直すこともあります。
「去年の私は、これが分からなくて困っていたな」と思い出すこともあります。
後輩ができたことで、自分が1年前より少し前に進んでいることを実感する瞬間も増えました。
④ 「相談する」ということは、まだまだ難しい
一方で、2年目になっても課題はたくさんあります。
その一つが、「どのタイミングで相談するか」です。
1年目は、分からないことがあればすぐに聞く。
もちろんそれも大切なのですが、2年目になると少しずつ、
「これは自分で考えて進めていいことなのか」
「これは誰かに相談したほうがいいことなのか」
を自分で判断する必要が出てきます。
そして、これが意外と難しい。
自分では「ここまでは大丈夫だろう」と考えて進めたことが、あとから振り返ると、
「もっと早く相談したほうがよかったな」
と思うこともあります。
経験が増えたからこそ、自分で判断する場面も増える。
でも、経験が増えたからといって、すべての判断が正しくできるわけではありません。
だから今の私は、
「自分で考えること」と「一人で抱え込むこと」は違う
ということを意識しています。
2年目は、何でも一人でできるようになる時期ではない。
自分で考えたうえで、必要なときに相談する。
その判断力も、これから身につけていきたいと思っています。
⑤ 一番大きかった変化は、「人生に余白ができたこと」

仕事の面でできることが増えたことも嬉しいです。
でも、私が2年目になって一番大きく変わったと思うのは、実はここかもしれません。
仕事とプライベートを、少しずつ切り替えられるようになったことです。
1年目の私は、毎日が真新しいものでした。
新しい環境。
新しい人間関係。
新しい業務。
初めて経験すること。
一日中ずっと気を張っていました。
その結果、休みの日になると、何もする気になれない。
寝て、起きて、また寝る。
気づいたら休日が終わっている。
そして、仕事がうまくいかないと、「人生そのものがうまくいっていない」ような気がしていました。
今思えば、私の世界が仕事だけになっていたんだと思います。
2年目になって、少しずつ仕事とプライベートを切り替えられるようになりました。
休みの日には旅行に行く。
ピラティスに行く。
カメラを持って好きな景色を撮る。
文章を書く。
好きなものを食べる。
友達や家族と話す。
そうやって、自分の「好き」ととことん向き合っていると、
「ああ、私って仕事だけの人間じゃなかったんだ」
と思い出せるようになりました。
仕事がうまくいかない日があっても、休日に好きなことをすればいい。
仕事で落ち込んでも、家に帰れば私の生活がある。
そう思えるようになっただけで、随分と楽になりました。
そして、体調を整えることも以前より意識するようになりました。
しっかり眠る。
食べる。
休む。
自分の好きな時間をつくる。
当たり前のようですが、1年目の私はそれができていませんでした。
仕事を頑張るためにも、自分自身の生活を大切にする。
当たり前のことですが、私にとっては大きな学びでした。
自分があって、その先に誰かを支えることがある。
助産師として誰かを支えたいと思うからこそ、自分自身を労わることも忘れないようにしたいと思っています。
これは、今でも私が苦手なことです。
それでも、誰かを支える仕事を続けていくためにも、誰よりも自分自身を大切にすることを忘れないようにしたいです。
⑥ 2年目になったからといって、急に「できる人」になるわけではない
ここまで書いてきましたが、私は今でもまだまだ課題ばかりです。
入職前に思い描いていた「助産師」になれているかと聞かれたら、正直分かりません。
もっとできるようになりたいこともあります。
判断に迷うこともあります。
失敗することもあります。
それでも、1年前の自分と比べると、確かに変わりました。
そして、その変化は「できることが増えた」ということだけではありません。
仕事との向き合い方が変わりました。
人との関わり方が変わりました。
自分の生活との向き合い方が変わりました。
そして何より、仕事だけが人生ではないと思えるようになりました。
1年前の私へ

もし、今この記事を読んでいるあなたが1年目で、毎日が苦しいのなら。
「2年目になれば絶対に楽になります」とは言えません。
人によって、職場によって、苦しさの理由は違うからです。
2年目になっても課題はありますし、仕事が大変なことに変わりはありません。
でも、今できないことが、ずっとできないとは限りません。
今は分からないことも、何度も経験するうちに分かるようになることがあります。
今は怖い先輩も、時間が経てば少しずつ人柄が分かるようになるかもしれません。
今は何人もの赤ちゃんの泣き声に頭が真っ白になっても、いつか「まずこの子」と優先順位をつけられる日が来るかもしれません。
そして、仕事しか見えなくなっているときは、仕事以外の自分を少しずつ取り戻してほしいと思います。
旅行でもいい。
運動でもいい。
音楽でも、写真でも、本でも、友達との時間でもいい。
仕事とは関係のないところに、自分の「好き」を置いておく。
それだけでも、世界が少し広がることがあります。
助産師を続けるかどうかも、自分で決めていい

そして、もう一つ伝えたいことがあります。
もし1年目が苦しくて、
「私は助産師に向いていないのかな」
「この仕事を辞めたほうがいいのかな」
と考えているのなら、すぐに答えを出さなくてもいいと思います。
続ける人もいます。
一度離れる人もいます。
別の医療職へ進む人もいます。
医療の世界から離れる人もいます。
私には、どれが正解なのかは分かりません。
私自身も、1年目の頃は「この先どうしたらいいんだろう」と何度も考えました。
だからこそ今は、誰かが決めた「正しい助産師人生」に、自分を無理やり当てはめなくてもいいと思っています。
大切なのは、周りから見て正しいかどうかだけではなく、自分自身が考えて、自分なりに納得しながら選んでいくことなのではないでしょうか。
あなたが思っている以上に、世界は広いです。
もちろん、どこへ行っても大変なことはあります。
仕事を変えれば、すべてが解決するわけでもありません。
それでも、今いる場所だけが世界のすべてではありません。
続けるにしても、離れるにしても、一度立ち止まるにしても。
自分で考えて、自分で選んでいいのだと思います。
2年目。まだまだ、のびしろしかない。

今の私は、まだまだ未完成です。
「これが私の理想の助産師です」と胸を張って言えるほどではありません。
でも、今はそれでいいと思っています。
目の前にいる人との関わりを大切にすること。
目の前で起きていることから学ぶこと。
そして、自分自身の心や身体も大切にすること。
学生の頃の私は、自分の中に勝手に「正解」の人生のロードマップをつくっていました。
この年齢でこうして、
この仕事をして、
こうなって、
こういう人生を送る。
でも、1年目になって、そのロードマップは一度崩れました。
そのときは、この先どう生きていけばいいのか分からなくなりました。
でも、今振り返ると、ロードマップが崩れたからこそ、自分で道を探し直すことができたのだと思います。
2年目になった今も、まだその途中にいます。
だから、今は「正解の助産師」になることよりも、
目の前の人を大切にすること。
目の前の出来事から学ぶこと。
そして、自分自身の心を置き去りにしないこと。
その一つひとつを大切にしていきたいと思っています。
もし今、1年目の自分に声をかけられるなら、
「大丈夫。今すぐ全部できなくてもいいよ。」
「あなたが思っているより、人生はもっと広いよ。」
そう伝えたいです。
そして、2年目の私にも。
まだまだ、のびしろしかありません。
焦らず、自分のペースで進んでいこうと思います。
